ゴリラさま
昼と夜が半々になる秋の日、近くの珈琲豆屋さんまでtochiと散歩をしました。
良いお天気で少し汗ばむくらいです。近道しようかと、家々の間を縫うようにつくられた遊歩道を通ることにしました。道の行く先は楠や椎の木がたくさん植わった大きな公園です。遊具は数えるほどですが、背の高い木々や芝生が心地よく、tochiが幼稚園へ上がるまでは毎日通っていました。
懐かしい道を12歳になるtochiと久しぶりに歩きます。道の途中にカバさんとゴリラさんの置物があり、そのころの姿のままでいてくれました。色も形も本物そっくり。子ども向けに変にかわいくされていないのがまたいいです。カバさんは四本の脚が、ゴリラさんは座っている下半身が地面に埋もれています。どうしてだろうとおもっていましたが、もしかしたら子どもたちがカバさんの背に乗りやすいように、ゴリラさんの頭を撫でやすいようにそうなっているのかもしれません。
なぜかゴリラさんの前にだけ、牛乳瓶の形の入れ物に青々した草花が挿しておいてありました。二つ並べてあって、まるでお供え物です。
「ゴリラさん、大仏さまみたいになってる」
おかしくて二人でけらけら笑ってしまいました。そしておもわず手を合わせてしまったのでした。
とても近いところにあるのに通らなくなってしまった懐かしい道。〝楽しいの種〟を一粒拾ったような気持ちになりました。
珈琲豆屋さんではじめて買ったビスケットは甘すぎず、ほんのりバターの香りがしておいしかったです。心がぽかぽかした一日でした。